職人の技 青木石 三野智基さん 三野浩太郎さん

大阪城にも使われた伝統の石材・青木石

瀬戸内は昔から石材業が盛んな地域で、全国的にも高級原石の産地として知られている。
その中でも特に採石の歴史が古く、豊臣秀吉が大阪城を築城した時に使用したといわれる青木石。最高級の庵治石に匹敵するほど品質は高く、独自の青みを持ち、優しい目合いが特徴。
採石場は丸亀市の広島にある。
丸亀港からフェリーで40分。青木石材協同組合さんに取材協力をいただき、採石のプロフェッショナルである三野智基さん、浩太郎さん兄弟が仕事場を案内してくれた。

【取材2014年7月】

青木石採石丁場

この山が三野さんの仕事場、青木石の採石丁場になる。
見上げると目がくらくらするくらいの断崖。曾祖父がこの土地を購入後、代々受け継いで石を切り出し、長い年月をかけて上から掘り下げてきたという職人の歴史が、まさに山の姿そのもの。
四代目社長の智基さんに話を聞いた。

青木石採石丁場

-四代目ということは、何年前からここで採石しているのですか?
90年は経ってると思います。ひょっとしたら100年くらいになるかもしれない。
ひいじいさんの時代は全部手で石を取ってました。発破の穴も手で掘るんです。下に潜っていくような取り方はできないので、上から落ちてくるような取り方です。
重機ができてからですね、このように下へ掘り進む採石ができるようになったのは。

「これで地球に引っ付いている石を切っていくんです。」

青木石バーナー

弟の浩太郎さんが見せてくれたのは、巨大なバーナー。

石は大きいまま取り出さないといけないんです。壊れたら墓石材になりません。石を地盤から切り離すためにバーナーを使います。切ると言うより、石を暖めて粉々にするかんじですね。花崗岩は熱に弱いという性質を利用して、バーナーで溝を空けてから、軽いちょっとした火薬で持ち上げます。
火薬で一気にやってしまうと1日で終わりますが、バーナーだと1日で3メーター角くらいしか切れませんから、1週間くらいずーっとやります。時間がかかってとても面倒くさいんです。それに、もの凄い音でしょ?(笑)ここ青木でも、バーナーを使わない人も多いんです。

青木石バーナー

青木石バーナー

-三野さんは、なぜ使うんですか?
石が大事に取れるから。経費はかかるけどきれいに取れるからです。
火薬でやっちゃうと壊れる部分が多い。バーナーできれいに切っておくと力が溝に抜けるから、四角くきれいに取れるんです。
ただでさえ商品になるパーセンテージが少ないので、これでやるとだいぶ変わります。
火薬でやるより何倍も手間がかかりますが、火薬はどうしても目に見えない割れが入りやすいです。大事なところが壊れてたりします。
他にはワイヤーソーを使って山ごと切ってしまうようなところもありますよ。

青木石切り出し

-仕事の内容について簡単に教えてください。
山から石を切り出して、だいたいのお墓の寸法に石を小割りし、それを加工業者さんに卸してます。
原石を取るのが僕らの仕事です。

青木石ワイヤーソー
切り出した石をワイヤーソーでまっすぐに切る

青木石小割り作業場
小割り作業場

-山のどこをどう見て次に取る石を決めるんですか?
順番に取っていきます。
というのは、どこから質の良い石が取れるかは、実際取ってみないとわからないんです。いいところは親父がすでに取ってしまってますが(笑)
取った肌でプロは見ます。模様が何もないのがいいんです。
ハッキリ見える模様やスジだけでなく、一見しただけではわからないようなものもダメなんです。
加工業者が切って磨くとキズがよく見えてきますから。
取引先に信頼してもらえるように、キズがないか山でしっかり吟味して出荷します。

青木石吟味
一見キズが無いような石も・・・

青木石吟味
水をかけると斜めのキズが1 本見える

-注文を受けてから切り出すんですか?
それでは間に合わないですね。
今は納期がめちゃくちゃ短いんですよ。納期一番でやってますから、ある程度在庫を抱えておかないと対応できないんです。
短い納期の発注に対して、「(石が)取れんもんはしゃーない。」で断ると、今後注文をもらえなくなります。信用ですよ。「取れんのやったらえーわ。」ってなります。

青木石出荷

-他に難しいことはありますか?
山の開発の仕方ですね。次どう取っていくか考えながらしないと、降りていけなくなったら取れないですから。
計画しないとダメですね。なかなかその通りにはうまいこといきませんが。
石の割れ方もその山によって特徴があります。うちの山はこういう具合に割れる、と。
バーナーするのも決まった方向にしかやりません。自然の摂理にあわせて切ります。
火薬の穴の堀り方や量もそうです。これだけ掘ったから何グラムとか量ってやるのではなく、この石にはこれぐらいとか、全部職人の経験による感です。
開発は過去に取った後のクセを覚えておくことが大事です。迷ったときは今でも父親に相談しますよ。

青木石出荷

-兄弟ふたりで役割分担はあるんですか?
例えば、弟が上で仕事してたら、僕は下で小割り作業とか。
一人ではきついです。生産量が限られてしまいます。

青木石切り出し

-今後の展望を聞かせてください。
もうちょっと大きくしたい。売り上げも上げて、石もいっぱい取って。
そのためには新しい機械を入れたい。ワイヤーソーを導入したいですね。
墓石の需要は下がっているのですが、幸いに青木石は受注があります。安定生産できればもっと売れます。
待たせている業者がいっぱいあります。
だからまだやりがいがあります。売れんのにがんばりません(笑)出せば売れるのでがんばってます。

-仕事の魅力は何ですか?
いい石が出たら嬉しいですね。それが一番やりがいを感じます。
苦しい思いをして出てきた石が良かったら、うれしい。やる気も出ます。
命かけて石を取ってますから。

青木石三野兄弟

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